日本で中古住宅の流通が本格化しない3つの理由

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「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が2009年にスタートしました。様々な認定基準があり、劣化対策、耐震性、維持管理、可変性、バリアフリー性、省エネ性、居住環境、住戸面積、維持保全計画の様々な観点から質の高い住宅について様々な優遇を敷いており、今後もさらに質のよい住宅供給が増えてくることが予想されます。

そうなった時に、考えておくべきものが「中古不動産市場」を育成するということです。住まいは一生ものでも、何らかの事情で売却をしなければならない場合もあるでしょう。そうした時、中古不動産市場が未成熟だと、適正価格で売ることができず、結果として様々な問題が生じることになります。

英米では、住宅の売買の約70~90%が中古住宅なのだそうです。その一方で日本の場合はわずか15%程度と非常に低いです。なぜ中古住宅の流通が本格化しないのか?そのネックとなる部分を考えていきたいと思います。

約20~25年で建物価値ゼロの評価

実際、今の木造住宅は極めて高品質です。しっかりとメンテナンスをすればかなり長持ちするようになっています。ところが、日本の不動産の慣習では20~25年経てば、建物としての資産価値ゼロ(木造の場合)というのが主流の考えです。

このような評価が前提だと、20年くらいで価値がゼロになるという前提でメンテナンスをするというのが合理的です。建物は細かくメンテナンスをすると、より長持ちします。
一方でメンテナンスを怠ると劣化しやすいものです。

20年で価値ゼロが前提だと、手抜きメンテナンスで十分と言うことになってしまいます。
そうなると、日本の中古不動産市場にはメンテナンスが不十分な物件しかないことになってしまい、市場が成長しません。

 

情報開示が不十分

不動産市場は典型的なレモン市場と言われています。
レモン市場というのは情報の非対称性がある市場で、売り手と買い手の間で、そのモノに対する情報量に大きな差があるマーケットです。

このレモン市場では、下記のようなことがおこります。

良質な中古物件:本来の価値2000万円
粗悪な中古物件:本来の価値1000万円売り手は本来の価値を知ることができ、買い手はそれが分からないとします。そして市場にはおおよそ1:1で良質と粗悪な中古物件が流通しているとします。

この場合、買い手は本来の価値を知ることができないので、購入することができる価格は2000万円と1000万円の中間である1500万円までというように考えます。

この場合、良質な中古物件の売り手は2000万円の価値があるはずの物件なのに、1500万円でしか買いたいと言う人がいないため良質な物件を持つオーナーはその価格では売りません。

となると、市場には粗悪な中古物件だけが流通すると言うことになる。というものです。
参考:レモン市場とは(金融経済用語辞典)

 

仲介業者による情報の囲い込み、両手

仲介業者による情報の囲い込みも大きな問題です。不動産仲介業者は受け取れる手数料は買い手と売り手から取られる形となります。
そのため、自社内で買い手と売り手の両方を見つけることができれば手数料は2倍もらえることになります。これを「両手」といいます。そのため、売り物件を預かる業者は広く情報を公開して、他の業者から買い手を紹介してもらうのではなく、情報を囲い込んで自社で買い手を見つけようとします。

ここに顧客目線はありません。

広く情報を公開していれば、より多くの買い手の目に留まり早く売れる可能性があり、さらに買い手同士の競合によって価格も上がる可能性があるのに、情報を囲い込み、自社の利益(両手)を優先しているわけです。

なお、こうした方法を正当化するため、物件情報を非公開とすることを「高く売るためのテクニック」などとして使っている業者もいます。
不動産取引はクローズドマーケットなので、「いい物件」というのは身内間で取引されて一般の市場に出てくることはほとんどありません。

そのため、ポータルサイトなどに情報が出ている物件は「業者が見向きもしなかった物件」というように考える人も多く、「非公開物件」を求める人も多いという状況もあります。
実際の不動産市場では非公開物件を求める人もが多いという傾向もあるため、それが本当に高く売るための「テクニック」なのか、それとも「自社利益を優先するための方便」なのかはわかりません。

 

中古不動産市場を活性化させるにはどうすればいい?

長々と書きましたが、中古不動産が流通しないにはそれなりの理由があるわけです。
それぞれについては、ある程度の対応策も考えられており、実行もされています。

情報開示についてはインスペクションのような診断サービスを行うところも登場してきています。
参考:中古住宅を事前診断する「インスペクション」とは何か?

また、「ソニー不動産は不透明な不動産市場の革命児となるか?」でも書きましたが、両手での取引をしないというソニー不動産なども登場しています。また、両手取引に関してはたびたび政治でも問題視されることが多く、米国に倣い今後は禁止の方向となるかもしれません。

空き家問題も大きくなっている現在、新規の住宅供給の重要性よりもストックとしての不動産をどう活用していくかということの方が今後、ますます重要になってくることは間違いないはずです。中古不動産の売買が少ないということは、逆に今後市場拡大のチャンスがあるということでもあります。

様々な形で新しいビジネスが生まれることを期待しています。

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