ロイター通信によると東京証券取引所が企業の公募増資に基づく不正な株取引、増資インサイダー問題に関して、2009年以後公募増資を行った上場企業のうち、公表前1か月の平均売買高と公表日の売買高を比較する増加率上位20銘柄のリストを提出したということです。今回は具体的にその銘柄が公開されているので、当ブログでも分析していきます。
さて、その20銘柄とその公募増資を引き受けた主幹事証券のリストは以下の通りです。
- 全日本空輸(9202) 野村證券
- 日医工(4541) 野村證券
- NEC(6701) 大和証券
- 東京電力(9501) 野村證券
- 池田泉州ホールディングス(8714) 三菱証券・みずほ証券
- エルピーダメモリ(上場廃止) モルガンスタンレー証券・大和証券
- マネックスグループ(8698) 日興証券・シティ・野村證券
- 国際石油開発帝石(1605) 野村證券 三菱証券 メリルリンチ
- 相鉄ホールディングス(9003) モルガンスタンレー 野村證券
- 日本板硝子(5202) 野村證券 ゴールドマンサックス
- 日本郵船(9101) 野村證券 三菱証券 大和証券
- りそなホールディングス(8308) 野村證券 メリルリンチ 大和証券
- 新生銀行(8303) モルガンスタンレー 野村證券
- 日立製作所(6501) 野村證券 ゴールドマンサックス証券
- 東武鉄道(9001) みずほ証券
- JVCケンウッド(6632) 野村證券
- NTN(6472) 三菱証券 野村證券 日興証券
- 東邦銀行(8346) 野村證券
- みずほFG(8411) みずほ証券 野村證券 大和証券
- 三井住友FG(8316) 大和証券 ゴールドマンサックス 野村證券 日興証券
(情報元:ngtnさんのツイート)
野村證券が主幹事を務めているケースが多いのが気になりますね。上位20社の疑わしき公募増資のうち、14社に主幹事として野村證券がノミネートされている状況です。もっとも、野村證券は販売力があるため、公募増資では主幹事証券になることは多いのですが…。
ちなみに、日経新聞に気になる記事も掲載されていました。
増資インサイダー、米系ファンドが幅広く関与か 金融庁、12証券との取引調査(日経新聞電子版)
(参考元:http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC05012_V00C12A7EE8000/)
金融庁は、米系ヘッジファンドグループの「ジャパン・アドバイザリー」(東京・中央)が増資インサイダー取引に幅広く関与していた疑いがあるとして、日本の大手証券12社との取引関係の全容を調査する。同社は高い手数料の見返りに、未公表の公募増資の情報を求めていたとみている。証券会社から未公表情報がどのくらい同社に漏れたか解明する。 同庁は6日、ジャパン社との取引関係を詳細に報告するよう12社に求める。
結局、大手証券と大手顧客による癒着に近い構造が見てとれるわけです。大手証券にとっては自社の高い手数料を通じて売買してくれる”優良”なお客様のために、ちゃんと利益を出してもらうために、ほぼ確実に儲けることができるインサイダー情報を提供するという構図になっているわけですね。
この間の「ANAの公募増資と野村證券のグレーな空売り急増」でも書きましたが、一度膿を完全に出し切らないとこの問題は絶対に解決しないと思います。特に日経記事に見られるように、組織的な形での公募増資インサイダーが常態化しているということであれば、日本の証券市場全体のイメージは地に落ちるでしょう。